なぜ2進数なのか?
スマートフォンで写真を撮る、音楽を聞く、ゲームをプレイする——これらすべての情報は、コンピュータ内部では「0」と「1」の組み合わせだけで表現されています。なぜ2つの数字だけで、こんなに複雑な情報を扱えるのでしょうか?
1. デジタル機器の仕組み
コンピュータやスマートフォンなどのデジタル機器は、物理的には電気信号の2つの状態(高い電圧と低い電圧)しか確実に区別できません。
身近なデジタル機器での2進表現
| デバイス | 「0」の状態 | 「1」の状態 | 具体例 |
|---|---|---|---|
| 電子回路 | 低い電圧(0V) | 高い電圧(3.3V) | スマートフォンのプロセッサ |
| SSD/USBメモリ | 電荷なし | 電荷あり | データ保存 |
| 光ファイバー | 光なし | 光あり | インターネット通信 |
| QRコード | 白い部分 | 黒い部分 | 決済アプリ |
| スイッチ | OFF | ON | 家電のリモコン |
💡 身近な例で理解しよう
- 部屋の電気:消灯(0)/ 点灯(1)
- ドアの状態:閉(0)/ 開(1)
- スマホの通知:なし(0)/ あり(1)
この「0」と「1」の組み合わせで数を表現する方法を2進法、2進法で表した数値を2進数といいます。
2. ビットとバイト:情報量の単位
ビット(bit)
0と1の2つの状態しかもたない情報量の最小単位をビットといい、2進数の1桁に相当します。
- 1ビット = 2通りの状態を表現
- 情報量1ビット = 2つの選択肢から1つを選ぶのに必要な情報量
バイト(Byte)
8ビットをまとめて1バイトといい、単位は「B」で表します。
- 1バイト = 8ビット = \(2^8\) = 256通りの情報を表現可能
現代の情報量単位
より大きな情報量は、\(2^{10}\) = 1024を基準とした単位で表現します:
| 単位 | 読み方 | 関係 | 身近な例 |
|---|---|---|---|
| bit | ビット | 基本単位 | 1つのスイッチの状態 |
| B | バイト | 1B = 8bit | 1文字分(英数字) |
| KB | キロバイト | 1KB = 1024B | 短いメール1通 |
| MB | メガバイト | 1MB = 1024KB | 写真1枚、音楽1曲 |
| GB | ギガバイト | 1GB = 1024MB | 映画1本、アプリ1個 |
| TB | テラバイト | 1TB = 1024GB | 外付けHDD、クラウドストレージ |
🔍 身近なデータサイズ
- LINE のテキストメッセージ:約50B
- Instagram の写真:約2 – 5MB
- YouTube の動画(10分、HD):約100MB
- Netflix の映画(2時間、4K):約7GB
- Nintendo Switch のゲーム:約5-20GB
3. 情報量の計算
基本公式
nビットで表現できる情報量 = \(2^n\) 通り
段階的に理解しよう
1ビットの場合
0 または 1
↓
\(2^1\) = 2通り
例: スマホの電源(OFF/ON)、Wi-Fi接続(切断/接続)
2ビットの場合
00, 01, 10, 11
↓
\(2^2\) = 4通り
例: ゲームの方向キー(上、下、左、右)
3ビットの場合
000, 001, 010, 011, 100, 101, 110, 111,
↓
\(2^3\) = 8通り
例: 音楽の音量レベル(0〜7段階)
8ビット(1バイト)の場合
\(2^8\) = 256通り
例:
- RGB色の各成分(0 – 255)
- ゲームキャラクターのレベル(1 – 255)
- 画像の明るさ(0-255の256段階)
4. 実践的な例題
例題1:コイン投げによる情報量
片面を黒、もう一方を白に塗ったコインがあります。このコインを1回から3回まで投げた時に表現できる組み合わせを考えてみましょう。
考え方 コインを投げた時に上側になるのは、黒か白のいずれか一方。 → 1回投げる = 1ビットの情報量
解答
- 1回投げる:黒、白 → 2通り(\(2^1\))
- 2回投げる:黒黒、黒白、白黒、白白 → 4通り(\(2^2\))
- 3回投げる:黒黒黒、黒黒白、黒白黒、黒白白、白黒黒、白黒白、白白黒、白白白 → 8通り(\(2^3\))
例題2:パスワードの安全性
4桁の暗証番号を考えてみましょう。
数字の場合(0-9)
- 各桁:10通り
- 4桁:\(10^4\) = 10,000通り
2進数の場合(0,1のみ)
- 同じ安全性を確保するには?
- \(2^n ≥ 10,000\)
- \(n ≥ 14\)ビット(\(2^{14} = 16,384\))
実際のアプリでは
- 英数字+記号(約94文字)
- 8文字:\(94^8 ≈ 6×10^{15}\)通り
- これは約52ビット相当の情報量!
5. 現代社会での応用
スマートフォンでの情報量
- 写真1枚:約3MB = 24,000,000ビット
- 4K動画1分:約400MB = 3,200,000,000ビット
- アプリ1個:約50MB = 400,000,000ビット
インターネット通信
- 5G通信速度:最大20Gbps = 20,000,000,000ビット/秒
- 光ファイバー:1Tbps = 1,000,000,000,000ビット/秒
ゲームの世界
- Minecraft:各ブロックの種類 = 約8ビット(256種類)
- ポケモン:個体値 = 6つの能力×5ビット = 30ビット
- オンラインゲーム:1秒間に約1000ビットの通信
6. 確認問題
基礎問題
- 次の情報を表現するのに最低何ビット必要ですか?
- ア)曜日(7種類)
- イ)信号機の色(3種類)
- ウ)トランプの数字(A,2,3…K の13種類)
解答
各選択肢について、必要なビット数を求めます。
公式: $n$種類を区別するには、$2^k ≥ n$ となる最小の k ビットが必要
ア)曜日(7種類)
$2^2 = 4 < 7 $→ 2ビットでは不足
$2^3 = 8 ≥ 7 $→ 3ビットが必要
イ)信号機の色(3種類:赤、黄、青)
$2^1 = 2 < 3$ → 1ビットでは不足
$2^2 = 4 ≥ 3$ → 2ビットが必要
ウ)トランプの数字(13種類:A,2,3,4,5,6,7,8,9,10,J,Q,K)
$2^3 = 8 < 13$ → 3ビットでは不足
$2^4 = 16 ≥ 13$ → 4ビットが必要
応用問題
- あるゲームで、キャラクターのステータスを以下のように設定したい。最低何ビット必要ですか?
- レベル:1〜100
- 職業:戦士、魔法使い、盗賊、僧侶の4種類
- 装備:剣、盾、鎧がそれぞれ有り/無し
解答
レベル(1〜100)
- 100種類を区別する必要がある
- $2^6 = 64 < 100$ → 6ビットでは不足
- $2^7 = 128 ≥ 100$ → 7ビットが必要
職業(4種類)
- $2^2 = 4$ → 2ビットが必要
装備(剣、盾、鎧がそれぞれ有り/無し)
- 各装備:1ビット(0=無し、1=有り)
- 3つの装備:3ビットが必要
合計: $7 + 2 + 3 = 12$ビット
発展問題
- スマートフォンの写真(3MB)をLINEで送信する際、通信速度が10Mbpsの場合、理論的に何秒で送信完了しますか?
解答
計算手順
- ファイルサイズをビット単位に変換
- 3MB = 3 × 8 = 24Mbit(1バイト = 8ビット)
- 送信時間を計算
- 時間 = データ量 ÷ 速度
- 時間 = 24Mbit ÷ 10Mbps = 2.4秒
答え: 理論的には2.4秒で送信完了
補足: 実際には通信の制御情報(ヘッダー)や再送処理などがあるため、もう少し時間がかかります。
まとめ:デジタル社会を支える2進数
私たちが日常的に使っているデジタル技術は、すべて「0」と「1」という2つの記号の組み合わせで実現されています。この単純な仕組みが、写真、音楽、動画、ゲーム、SNSなど、現代生活に欠かせない豊かなデジタル体験を可能にしているのです。
次回スマートフォンを使うとき、その画面に映る美しい写真や流れる音楽が、何億個もの「0」と「1」の組み合わせであることを思い出してみてください。

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