学習目標
この回が終わる頃には、以下のことができるようになります:
- CloudTeXの基本的な使い方を理解する
- TeXの基本構造を理解する
- 簡単な日本語文書を作成できる
1. TeXとは何か?
TeX(テフ) は、美しい文書を作成するための組版システムです。特に以下の特徴があります:
- 数式が美しく表示される → 数学・物理・工学系のレポートに最適
- 文書構造を明確に管理 → 長い論文でも整理しやすい
- プロフェッショナルな仕上がり → 学術論文レベルの品質
現代におけるTeXを学ぶ意義
1. 数式を含む文書作成において有利 WordやGoogleドキュメントでは難しい複雑な数式も、TeXなら正確で美しく表現できます。
2. WEB上で数式を記述する必要性 多くのWebサイト(Khan Academy、Stack Exchange等)でTeXライクな記法が採用されており、オンライン学習や技術的な議論で必要なスキルです。
3. プレゼンテーションでbeamer 学術・技術系の発表では、PowerPointでは表現困難な数式や図表を含むプレゼンテーションを作成できます。
4. AIと数式を使ったやりとり ChatGPT等のAIツールとの数式を含む対話や、Jupyter Notebookでの研究活動において、TeXの知識が重要になっています。
2. TeX環境の選択
TeXは、現在、それぞれのPCでのスタンドアローンの環境とクラウド上で使える環境の大きく2つの流れがあります。
スタンドアローン環境
- TeX Live(Windows/Mac/Linux)やMiKTeX(Windows)をPCにインストール
- メリット:オフラインで作業可能、完全な制御
- デメリット:環境構築に時間がかかる、設定が複雑
クラウド環境
- Overleaf、CloudTeX等のオンラインサービス
- メリット:すぐに始められる、共同編集可能、環境統一
- デメリット:インターネット接続が必要
今回の選択:CloudTeX
本授業では環境構築の時間省略のために、クラウド環境のCloudTeXを利用します。これにより:
- すぐに学習開始:インストール作業不要
- 統一環境:全員が同じ環境で学習
- トラブル回避:個別のPC環境による問題を排除
- どこでもアクセス:家庭学習でも継続可能
3. CloudTeXの使い方
CloudTeXにアクセス
- ブラウザで「CloudTeX」と検索してアクセス あるいはコチラ https://cloudlatex.io/
- アカウントを作成(メールアドレスが必要)
- ログイン後、「新しいプロジェクト」を作成
基本操作
- 左側:ファイル一覧とコードエディタ
- 右側:コンパイル結果のプレビュー
- コンパイル:「タイプセット」ボタンをクリック
3. TeXの基本構造
すべてのTeX文書は以下の構造を持ちます:
\documentclass[uplatex]{jsarticle} % Document class specification
% Preamble starts here (settings section)
\usepackage[utf8]{inputenc}
% Preamble ends here
\begin{document} % Document begins
% Write document content here
\end{document} % Document ends
各部分の説明
1. 文書クラス(\documentclass)
- 文書の種類を指定
jsarticle:日本語の記事・レポート用[uplatex]:日本語処理のオプション
2. プリアンブル
- 文書の設定やパッケージの読み込み
\usepackage{パッケージ名}でパッケージを読み込む- 例:
\usepackage[utf8]{inputenc}は文字エンコーディング(UTF-8)を指定(現在のLaTeXでは自動設定されますが、明示的に書くことでプリアンブルの書き方を学べます)
3. 文書環境(\begin{document} ~ \end{document})
- 実際の文書内容を書く部分
4. 最初のTeX文書を作ってみよう
例題1:基本的な文書
以下のコードをCloudTeXに入力してコンパイルしてみましょう:
\documentclass[uplatex]{jsarticle}
\usepackage[utf8]{inputenc}
\begin{document}
こんにちは、TeXの世界へようこそ!
これは私の最初のTeX文書です。
\end{document}
例題2:タイトルと著者を付ける
\documentclass[uplatex]{jsarticle}
\usepackage[utf8]{inputenc}
\title{私の最初のTeX文書}
\author{山田太郎}
\date{\today}
\begin{document}
\maketitle
こんにちは、TeXの世界へようこそ!
これは私の最初のTeX文書です。
\end{document}
新しく出てきたコマンド:
\title{タイトル}:文書のタイトルを設定\author{著者名}:著者名を設定\date{\today}:今日の日付を自動挿入\maketitle:タイトル部分を実際に表示
5. 文書の基本構造
セクションの作り方
\documentclass[uplatex]{jsarticle}
\usepackage[utf8]{inputenc}
\title{レポート例}
\author{高校太郎}
\date{\today}
\begin{document}
\maketitle
\section{はじめに}
これは第1章の内容です。
\section{本論}
これは第2章の内容です。
\subsection{詳細1}
第2章の小見出し1です。
\subsection{詳細2}
第2章の小見出し2です。
\section{まとめ}
これは第3章の内容です。
\end{document}
セクションコマンド:
\section{見出し}:大見出し(1章、2章…)\subsection{見出し}:中見出し(1.1、1.2…)\subsubsection{見出し}:小見出し(1.1.1、1.1.2…)
段落の作り方
\documentclass[uplatex]{jsarticle}
\usepackage[utf8]{inputenc}
\begin{document}
これは最初の段落です。TeXでは空行を入れることで
段落が分かれます。
これは2番目の段落です。行の途中で改行しても、
コンパイル時には自動的に適切な位置で改行されます。
空行を2つ以上入れても、段落間のスペースは変わりません。
\end{document}
重要なポイント:
- 段落の区切り:空行を1つ入れる
- 強制改行:
\\を使う(表や数式環境でよく使用) - 複数の空行:1つの空行と同じ扱い
6. TeXで使用される特殊文字
コメントと特殊文字の表示方法
TeXコードにコメントとして記載し、印刷後には表示させたくない場合には、「%」をつけます。
また、TeXで特別な意味を持つ文字(%, $, &, #, _, { ,} )を記述したい場合は、バックスラッシュ(\)を前に付けて表示します:
\documentclass[uplatex]{jsarticle}
\usepackage[utf8]{inputenc}
\begin{document}
% This is a comment. It will be ignored during compilation
この文章は表示されます。% From here to end of line is a comment
特殊文字の表示例:\$ \& \% \# \_ \{ \}
\end{document}
7. 実習課題
課題1:基本文書の作成
以下の例文を参考に、TeX文書を作成してください:
例文:
タイトル:「私の好きな季節」
著者:あなたの名前
1. はじめに
私は四季の中でも特に秋が好きです。その理由を述べます。
2. 秋の魅力
秋には美しい紅葉が見られます。また、涼しくて過ごしやすい気候です。
3. まとめ
秋は自然の美しさと快適さを兼ね備えた素晴らしい季節です。
この例文をTeX形式で作成し、適切にセクション分けしてください。
課題2:構造を持った文書
以下の構造の文書を作成してください:
タイトル:「私のIBの科目選択」
1. HL科目
1.1 Math AA
1.2 Physics
1.3 English A
2. SL科目
2.1 Japanese A
2.2 History
2.3 Visual Art
3. Core科目
3.1 TOK
3.2 EE
3.3 CAS
各小見出し(1.1、1.2など)の下に、その科目を選んだ理由や学習内容について2-3行の文章を書いてください。
8. よくあるエラーと対処法
エラー1:コンパイルエラー
症状:コンパイルが失敗し、エラーメッセージが表示される
原因と対処:
\begin{document}と\end{document}が対になっているか確認- コマンドのスペルミスがないか確認
- 日本語文字化け → 文書クラスとパッケージを確認
エラー2:文字化け
対処:
\documentclass[uplatex]{jsarticle}
\usepackage[utf8]{inputenc}
この2行が正しく書かれているか確認
エラー3:タイトルが表示されない
対処:
\maketitleコマンドが\begin{document}の後に書かれているか確認
9. 今日のまとめ
今日学んだこと:
- CloudTeXの基本的な使い方
- TeX文書の基本構造(文書クラス、プリアンブル、文書環境)
- タイトルと著者の設定方法
- セクションと段落の作り方
- 基本的なエラーの対処法
次回予告:文字装飾(太字、斜体)とリスト(箇条書き、番号付きリスト)の作り方を学びます。
宿題
今日学んだ内容を使って、「私の趣味について」というタイトルで、以下の構造を持つ文書を作成してください:
- はじめに
- 趣味の紹介 2.1 趣味1 2.2 趣味2
- その趣味を始めたきっかけ
- まとめ
各セクションには3-5行程度の文章を書いてください。次回の授業で確認します。

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